未味なり太 『イケニエハッピートリガー』 (MF文庫J)

イケニエハッピートリガー (MF文庫J)

イケニエハッピートリガー (MF文庫J)

それなら話は早い! イケニエちゃんのお話をしましょう!
私は良心的で優しいカミサマです! ですので、ご安心下さい!
――要求するイケニエは、たった一人だけですッ!!!
どんな方法を用いてもいいので、その一人を殺して下さい。その方の生命と引き換えに、全ての人類さまを救済いたしますっ。

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ある日のこと.全人類の夢にカミサマが現れてこう言った.ひとりのイケニエ少女をぶっ殺すことと引き換えに,人類さまを救済します.ただし,少女は不死にしました.少女を殺す唯一の方法は,彼女を幸せにすることです.それでは人類の皆さま,イケニエちゃんを幸せにして(ぶっ殺して),幸せになってください,と.それから数年の時が経った.
超能力者たちの世界にやってきてしまった高校生はイケニエに選ばれた少女と出会う.第10回MF文庫Jライトノベル新人賞審査員特別賞受賞作.ひとりの少女が幸せになる=殺されることで完成する世界のボーイミーツガール.ストーリーの尖りっぷりもさることながら,主人公以外のすべての登場人物(と読者)には最重要の情報をあますところなく伝えながら,主人公にだけは自然に伏せたままうまく話を運んでいると思う.超能力者たちの罪悪感とか,それぞれのサイドの誤解とかを,柔らかいテキストで無理なく語ってくれる感じ.ご都合主義も大いにあるのだけど,変なあざとさもなく世界観に入っていけた.まあしかし,話が急転したかと思ったら〈to be continued...〉でぶつ切りになったのはいただけないというか.実はシリーズもののプロローグでした,と明らかになるラストには本を叩きつけたくなりましたわ.ちゃんと続きを出さないと許さないわ.