深見真 『シークレット・ハニー 1. 船橋から愛をこめて』 (富士見ファンタジア文庫)

短気を起こして涼音や周囲の人たちを傷つけないことが大事だ。自分の傷は自分で癒すことができるが、他人の傷は自分がどんなに頑張っても癒せないことがある。他人を傷つけるということは、取り返しのつかないことだ。
村上春樹が書く小説の主人公みたいに正しい判断をしなければいけない

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読書が好きで人畜無害な船橋市在住の高校生,飯田五十六の家に突然ホームステイすることになった金髪の美少女,キャスリン・涼音・アマミヤ.彼女は実はCIAの最年少ケース・オフィサーであり,ラングレーの量子コンピュータ「フロンティア」によって「世界崩壊の引き金になる」と予言された五十六の秘密を探りに訪れたのだった.
米CIA,露SVR,中国国家安全部,そして公安調査庁船橋を舞台に,各国スパイ組織の美少女エージェントがひとりの高校生を巡って大暴れ.非常にボンクラ度の高いスパイ小説と言えよう.作者が“一〇年以上作家をやってきて、劇中に殺人(他殺死体)場面が登場しない”初めての本,とのことで,殺人描写がない埋め合わせかなんなのか,いつにも増してボンクラ度が高い気がする.というかライトノベルを主戦場にしててそれは流石というかなんというか.作中で元ネタとなっているスパイ映画やラブコメ漫画,小説のタイトルなんかをバンバンと出していて,趣味の度合いの強さもまた高い.普通に読んだら陽気でボンクラで「優しい話」,なんだけど,あとがきを読むといろいろと込められた何かがあるのかな,という気分になる.“僕みたいな人間が読書を語るなら、それは絶対に「誰か」の言葉が必要になるんです。”という言葉には少しはっとするところがあったりなかったり.