織守きょうや 『SHELTER/CAGE』 (講談社BOX)

SHELTER/CAGE (講談社BOX)

SHELTER/CAGE (講談社BOX)

ここで過ごした十年間が、阿久津を少しも変えなかったのだとしたら、この十年に意味はあったのだろうか。
この場所に、意味はあるのだろうか。

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様々な心情,立場を抱えながら刑期を過ごす囚人たち,刑務官たち,弁護士.とある民営刑務所を舞台に描く群像劇.タイトルと表紙イラストだけで近未来の話かと思ったら現代の小説だったのでちょっと驚いた.民間刑務所と言っても,現実と大きく異なるのは職員の登用方法くらい(たぶん)で,変にショッキングなことを書くでなく,ヒューマンドラマ過ぎることもなく.それでいて不思議な説得力があるのは,作者が現役弁護士だからなんだろうな.兼業作家(本業を強く押し出すタイプの)のフィクションとしては理想型のひとつではないかと思うし,とても講談社BOXらしくない良心的な作品だと思う.良い小説でした.もうちょっと読まれてもいい.