小川淳次郎 『稲妻姫の怪獣王』 (講談社ラノベ文庫)

稲妻姫の怪獣王 (講談社ラノベ文庫)

稲妻姫の怪獣王 (講談社ラノベ文庫)

力は無力。
人間は人間。
怪獣にはなれない。
怪獣王には程遠い。
ガメラにも、ゴジラにもなれやしない。
「家は、帰る家は、どこだろう」
なくしてしまった。
わかっているはずだった。

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身長2メートル50センチ,体重220キロの巨体を誇る高校生,亀楽神楽は,目が覚めると見知らぬ丘にいた.目の前にいたのは稲妻姫の名を持つ吸血鬼のアーニャとアメリカ人のドク.アーニャに血を吸われ,奴隷の契約をした神楽は大きな力に目覚めることになる.
ゴジラガメラ,そして『パシフィック・リム』に触発されて書いたという怪獣小説.現代世界からファンタジー風異世界に持ち込まれた新しい概念として,「怪獣」の概念を純粋に抜き出して描く,という試みがとても面白い.「怪獣」とは災害であり武力であり,神々すら殺す力を持つ,途方もない夢,あるいは絶大なる怒りである,という.ストーリーは怪獣ものよりは変身ヒーローものの側面がやや強い気がするのだけど,理屈抜きの力強さを描く戦闘シーンの熱量は本物だと思う.序章と「おばあちゃんちのような」と表現される異世界の酒場が持つ意味,そして「怒り」の意味が明らかになるエピローグといい,ほんと,他にない独特の熱量を持つ作家さんだと思う.3月に出る2巻も買わせてもらいます.