さがら総・渡航(Speakeasy) 『クズと金貨のクオリディア』 (ダッシュエックス文庫)

社会は信頼で成り立っている。冷たい諦観という名の信頼によって。どうせわかりはしないという諦めだけが、欺瞞と猜疑なき諦観だけが、人の心を安らかにできる。
毎朝届けられる新聞の情報も、ランチで食べる食品の産地表示も、夜のお店の女の子の年齢も、疑いだせばきりがないし、真実を追求しきることなど不可能だ。
だから、人はみな諦めて受け入れている。なら、理解や追求の放棄こそ信頼だろう。

Amazon | クズと金貨のクオリディア (ダッシュエックス文庫) | さがら総, 渡航(Speakeasy), 仙人掌 | ライトノベル 通販

世にあるのは主観と客観ではなく、主観と主観だけ。主観の対義は客観ではなく他の主観だ。客観性を欠くのであればいかな単位をもってしても定量的に測ることなどできず、ただただ拝み伏して奉り、諮ることだけが許されている。
故に自身の主観だけで世界は成立しえず、互いの主観をすり合わせてすり潰すことが世界を構築せしめる。それが損なわれるのなら、世界はきっと崩壊するだろう。

Amazon | クズと金貨のクオリディア (ダッシュエックス文庫) | さがら総, 渡航(Speakeasy), 仙人掌 | ライトノベル 通販

ふたりのライトノベル作家による合作青春小説.底辺男子高校生と,高利貸しを営むクズな女子高生のすれ違いというか,高度な言葉のドッジボールというか.作者ふたりがお互いの力を存分に振るいあい,殴りあうようなコミュニケーションをものすごく高いレベルで成立させていると思う.ストーリーを理解するには冒頭で参考文献としてあげられる二冊,「ヴェニスの商人」と聖書の知識が必要かもしれない.というか自分には知識がないので教養が試されているのではないかと不安になる.まあ知らなければ知らないでもそれぞれにハイレベルなテキストは楽しいし,というかこのヒロインものすごく怖ぇ,みたいなモチベーションに引っ張られて読んでしまう感じ.シリーズの続きを楽しみにしています.