森田季節 『ストレンジガールは甘い手のひらの上で踊る』 (MF文庫J)

「ごめんなさい」
目の前の、私を殺すはずの女の子が泣きそうになりながら、言う。
よろしくお願いします、と答えるべきなのだろう。まさに畳の上で逝ける私は幸せ者だ。しかも、おしまいに悪いことをして去っていくというのだから、なかなかに痛快なエンディングだ。

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高校生の一色佐奈は,クラスメイトの浦上彰人に恋をしていた.彰人は幼なじみの土岐万里花ととある秘密を共有していた.その秘密とは,古い集落に受け継がれる,「イケニエビト」の「せんたい役」.200年以上生きるというイケニエビトの(つくも)の存在を彰人と万里花に知らされた佐奈.3人(と1人)の関係が大きく動いてゆく.
神戸の名谷駅付近を舞台にした三角(?)関係の物語.作者もどこかで語っていたように,デビュー作の『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』,『プリンセス・ビター・マイ・スウィート』と共通した雰囲気を持っている.ストーリーは正直ほとんど忘れているのだけど,舞台や登場人物の一部もつながっているのかな.だいぶ読みやすくなっているものの,デビュー当時の森田季節がなんかよくわからず苦手だった記憶が蘇ってくる.古い伝統,殺されることで忘れられるイケニエビトと記憶を喰うタマシイビト,三角関係,地方都市,そういったものを可愛らしくも憎たらしく,腹の黒いキャラクターで描くあたりが苦手なのかな.ストーリーには脈絡があるようなないような.雰囲気を読むものと言い切ってしまうと違うと違う気がするし,好きなひとは間違いなく好きだと思うのだけど,やはり自分にはよくわかんなくて苦手な感じでした.