川上亮 『進撃の巨人 隔絶都市の女王(下)』 (講談社ラノベ文庫)

どちらの予想も裏切られた。
どちらの思い描く姿よりも、世界はずっと残酷だった。
足もとがふらついた。危うく屋根の縁から落下しかけた。
あわてて一歩、あとずさった。
まだ死ぬわけにはいかない。
まだ、信念まで否定されたわけではない。

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巨人の襲来によって王都から孤立化したクィンタ区は,駐屯兵団の団長代理であるリタによって統治されていた.捕えた巨人を恐怖政治の象徴に使い,自身の父親まで処刑したリタ.リタの幼なじみのマティアスは,彼女の暴走を止めるべく画策する.
孤立した街の秩序を守ろうとする「女王」と,女王から町の住人を解放しようとする幼なじみの少年の対立とその結末.外伝小説の下巻.小さな街に渦巻く裏切り,策謀,狂気をそつなく描いていると思うのだけど,ちょっと無難にすぎる印象もある.幼なじみふたりの狂気とすれ違いをもう少し尺を使って掘り下げてくれるともっと良かった気がする.原作も進行形だからあまり勝手なネタを作れなかったということもあるのかなあ.本当に怖いのは巨人より人間,という部分も共通しているか.個人的には作者買いだったのだけど,イラストの村田蓮爾が凄まじく力の入った良い仕事をしているので,イラスト買いでも損はしないと思いますよ.モノクロイラストらしからぬ眼力にぞわぞわすると良いと思いますよ.