宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た! (電撃文庫)
- 作者: 松屋大好,霜月えいと
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2015/08/08
- メディア: 文庫
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「門限とかあるんですか?」
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「はい、さっき話した同質化の儀式が五時半からなんです。あんまり長く降ると困っちゃいます。この風じゃあ、傘はさせませんし。かといって、濡れて帰ると、体調が良くなりすぎて同質化できなくなります」
「良くなる?」
「ええ、この雨は栄養が豊富ですから」
母親の都合で,岐阜と石川の県境にある四之村に引っ越してきた高校生の神室圭治.村にある唯一の農業高校に転入した圭治は,ハコさんこと祖母井葉子が部長を務める探偵部に半ば強制的に入部させられる.ハコさんは,この村の住人は宇宙人なのだと言う.
一本一万キロカロリーの大根,男女問わず妊娠することの可能な一族,ちぎれた腕さえ修復する治療用ミミズ,通常時空から切り離されて時間の止まった空間,植物人間,すべての人間が徹底して「平等」な村…….明治後期まで知られることのなかった奇妙な隠れ里を舞台に,オカルトやSFやホラーのアイデアをこれでもかと詰め込んだ奇想小説集.コミカルなテキストでかなりエグいことをやっている.電撃文庫でこんな堂々とした食人描写(一箇所ではない)を読まされることになるとは思わなかった.独立した短篇五編から構成されているのだけど,五話目が断トツですごいというかひどい.飴村行のような,不条理と暴力とぬるぬるしたものを感じた.なぜ電撃小説大賞に応募しようと考えたのか.
野菜の栽培が趣味の主人公が雑草を刈る場面とか,田舎町の不思議な怪しさとか,アイデアに負けずテキストも楽しい.ハコさん(ヒロインなのに剛毛)をはじめとする女の子の太もも描写もまぶしくて素晴らしい.ひょっとしなくてもすごい傑作じゃないですか.あとがきでは『八つ墓村』と『砂の器』の名前をあげているけど,下敷きになった話はまだありそうな気がする.皆もとっとと読むといい.