喜多見かなた 『されど僕らの幕は上がる。 Scene.1』 (スニーカー文庫)

「涼太よりちょっと年上だけど、いちおう『みとり世代』だから。って……冗談だよ」
たいしておもしろくもなさそうに、琴は唇のはしっこで小さく笑う。
それは、俺達の世代を指すときによく使われる言葉だった。
衰退するこの国の最期を看取る世代という意味らしい。「ゆとり」でも「さとり」でもなく「みとり」。物事を最初から諦めているという文脈なんかで使われることが多い。

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7人の男女がひとつ屋根の下で暮らす人気のリアリティ番組,「シェアハウス」に,新キャストとして参加することになった高校生香椎涼太.キャストのアイドルの青葉ひなたとお近づきになるチャンス,と思いきやいきなりのゴミムシ呼ばわり.心折れそうになる涼太の心の支えだった琴は,ある日とつぜん番組を「卒業」してしまう.
役割を与えられた若者たちが演じる「台本のない青春」,その影では不穏な何かが進行していた.誤解を恐れずに言えば,ちょうどいい面倒臭さが良い青春ものかな……と思っていたら,実はその裏に,という後半の展開に度肝を抜かれた.どうやら現代よりも少しだけ未来の話らしい,というのは気づいたのだけど,こんな展開予想できるわけないわ.しかし,この一巻はミステリで言うと出題編まででぶつ切りされている印象.二巻は冬予定とはどういう了見か.デビュー作も買った上で,続きをお待ちしております.