- 作者: 柴村仁,六七質
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/04/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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思わず息を詰めた〈彼〉のすぐそばを、両腕を水平にピンと伸ばした全裸の男が「ぶうううん、ぶうううん」と低く唸りながら、積もった糸を蹴散らし蹴散らし、すごい勢いで駆け抜けていった。その男の頭部は雄の鍬形虫のそれであり、股間からは雄の兜虫の頭部が生えていた。
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ぶうううううん、ぶうううぅぅぅ……
甲虫男は目抜き通りに飛び出していった。
秋祭りの終わりから大晦までの数十日間だけ開かれる「細蟹の市」.ここでは手に入らぬものはないという市に,飲むだけで若返ることができるという「復ち水の酒」を求める男が訪れる.
「細蟹の市」とそこに住む人々,訪れる人々を描くシリーズの第三巻.主人公のひとり,赤腹衆のサザの過去が明かされる.『夜宵』(感想),『宵鳴』(感想)と,巻を追うごとに和風ダークファンタジーとしての完成度が着実に上がっていると思う.輪廻転生とか黄泉の国といった,死生観が今までになく強く出ていた気がする.ついさっき気づいたけどタイトルもループしてるのな.残酷とかグロとかに振り切れているわけではないのだけど,「