さがら総(Speakeasy) 『そんな世界は壊してしまえ ―クオリディア・コード―』 (MF文庫J)

今まで勘違いしていた。この男は、決してこちらを馬鹿にしているわけではなかった。
まるで逆だ。
強く敬っているのだ。人類のことを。どこまでも残酷に。対象が戦う者であるかぎり、絶対的信仰をとめてくれないのだ。
男子生徒は、吐き気がこみ上げるのを感じた。初めてアンノウンを見たときよりも、今まで経験したどんなに厳しい訓練よりも、なお強い吐き気だ。

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人類の敵,“アンノウン”によって壊滅した近未来.対アンノウンを担う前線基地,湾岸防衛都市東京の学園に所属する朱雀壱弥は,人類愛に生きていた.全人類を平等に愛し,アンノウンを激しく憎む朱雀は,死に別れたはずの「天使」と再会する.
帯曰く「ポジティブクズ・ミーツ・ドM天使」.その実はサイコパス小説.主人公の朱雀はポジティブクズというより,かなり直球のサイコパスだと思うのよね.ワタミ系というか.上の引用が主人公を指した説明だとは思うまい.チョロいところもあるけれど,導入の一人称の語りが一冊分続いていたら,どこかで私の心が折れていたと思う.
「世界を愛する」という言葉と,行動のずれというか,サイコパス性が実に気持ち悪い.人類愛とか善意とかやる気とか,キーワードのひとつひとつがいちいち意味を裏切ってくる感じ.語りは信用できないけど作者は信用できる,気がしている.読者に合わせてなんだかんだとわかりやすさを優先している気がするのがむかつくのよな.いやもう良かったですが.続きをお待ちしております.