相沢沙呼 『緑陽のクエスタ・リリカ 魂の彫塑』 (MF文庫J)

「へへッ……、こう見えて昔は俺も傭兵だったんだが、脛に矢を受けちまってなァ」
と、その物乞いはズボンの裾を捲り上げる。
膝から下が、無かった。腐り落ちた肉が変色した痕跡が、色濃くジゼルの視界に飛び込んでくる。見ていてあまり心地良いものではなく、少年は思わず眼を背けていた。

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魔術師になることをあきらめ,魔術師の学園をドロップアウトしたジゼル・アンダーブルックリン.冒険者になることに決めたジゼルは,冒険者の集まる酒場に向かうが,けんもほろろに追い返されてしまう.そこで出会った半妖の少女の,姉の行方を探してほしいという依頼を引き受けたジゼルは,やがて大きな事件の核心に触れることになる.
鮎川哲也賞でデビューした作者初のライトノベルTwitterで「ライトノベルを書きたい」ことをずっと言っていたから良かったよなあ.ワンアイデアに偏らず既存のものに寄り過ぎず,ファンタジーの世界観を土台から総合的につくっている印象がある.そのため,導入は硬いし地味に感じるのだけれども,終盤に向けて着実に盛り上がっていく.ひねりは効かせつつも,良い意味での王道を征く感.あとなんだかんだとふとももも健在.派手さはないものの,良いものでした.