ベン・H・ウィンタース/上野元美訳 『世界の終わりの七日間』 (ハヤカワ・ミステリ)

世界の終わりの七日間 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

世界の終わりの七日間 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

殺人事件の真相究明は、被害者のためにやるのではない。つまるところ、被害者はすでに死んでいるからだ。真相究明によって、銃やナイフや毒で損なわれた社会道徳を、社会のために回復する。また、ある種の行為をすれば必ず刑罰を受けることを人々に知らしめ、社会道徳を維持する。
しかし、社会は死んだ。文明は燃える都市と化し、そこに住む怯えた動物たちは穀物倉庫に集まり、焼け落ちたコンビニエンスストアで、プリングルズの最後の一缶をめぐってナイフで突きあう。
にもかかわらず――そうであっても――私は進む。暗闇を階段に向かって突き進み、必死で逃げる小さな人影を追いかける。

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地球に小惑星が衝突する日まで残り一週間.元刑事のパレスは,妹のニコの行方を探し,足跡をたどっていた.その過程で,パレスはアーミッシュの男に会う.
滅びを目前にした世界で,元刑事の男は真実と妹を追い続ける.『地上最後の刑事』(感想),『カウントダウン・シティ』(感想)に続く〈最後の刑事〉三部作の完結編.完結編とは思えぬほど,極めて静かにゆっくりとしたペースで最後の事件と最後の一週間が描かれる.終わりが定まり,崩壊した社会で最後まで真実を追いかけようとした男,と書くと何らかの執念かと思われそうだけど,そういうのともなんか違うのよな.静かな最後を選んだパレスの心境はどういうものだったのか.うまく言葉にならないのだけど,しみじみと良い物を読んだな,という気持ちになったのでした.