手代木正太郎 『魔法医師(メディサン・ドゥ・マージ)の診療記録2』 (ガガガ文庫)

魔法医師の診療記録 2 (ガガガ文庫)

魔法医師の診療記録 2 (ガガガ文庫)

柵の内に繋がれている家畜の姿――それは、下半身が牛、上半身が人の姿だったのである。
すなわち、サントール。牛だけではない。馬や山羊や豚の下半身のサントールもいる。
サントールたちに村人が飼い葉を与え、毛を撫でつけてやっていたのだ。
……ううああぁぁん。……いいいぃぃぃ……。……うういいぃぃん……。

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魔法医師(メディサン・ドゥ・マージ)クリミアと看護師(アンフィルミエ)ヴィクターのふたりは,ある少女に会いに孤児院を訪れる.人買いのデュラハンから孤児院に逃げてきたという少女,コゼットは,自分のドッペルゲンガーといつもいっしょにいると言い,ひとりで楽しそうに会話をしている.時を同じくして,ドッペルゲンガーの噂を聞きつけた魔法解剖医,ヴァネッサが孤児院にやってくる.
魔法医師(メディサン・ドゥ・マージ)というファンタジーの皮をかぶった忍法帖第二巻.いや素晴らしい.ちょう楽しい.ゴリラとケンタウロスデュラハンを合成させたクリーチャーの群れが腸内ガスを爆発させて放火したり,特殊異端審問官が“十字架投擲剣(クロワシュリーケイン)”を投げたりする.下品だったりグロテスクだったりする派手な忍法,もとい聖法(ミラコロ)とその解説が目立つけど,ストーリーテリングも見事.ハチャメチャなアイデアも,何重にも丁寧に張った伏線を駆使して,リアリティレベルを見事にコントロールしている.ドッペルゲンガーデュラハン(とケンタウロス)がこんなに綺麗に一本の線でつながるなんて思わなかった.単なる忍法帖オマージュではない,実に良い仕事をしている.ほんと傑作だと思う.ニンジャなエンターテイメントが読みたいひとは読めばいいと思うよ.