- 作者: 小山恭平
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/11/18
- メディア: 文庫
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「私が傷をつくり哀れさをさらすと……大勢の自称正義の味方たちが加害者を痛めつけ、場を変化させてくれる。場を一変させる。その人たちはね、別に私を助けようと思っているわけではないの。日頃ため込んだ憂さを、私の用意した『
Amazon CAPTCHA加害者 』に向かってぶつけているだけ。叩いていいものに向かって、正義の皮でくるんだ悪意を精いっぱい投げつけるのだわ」
地味だけど,使い方によっては便利な異能.そんな異能を転売する異能転売業者のひとつ,「秘蹟商会」は,ポンコツ店長ゆおとアルバイトの見識によって経営される小さな店.ある日,見識の能力を見抜いた大手異能転売業者,寄場蓮華によって,見識の引き抜き工作が行われ始める.ゆおのそばにいることを第一とする見識はなびこうとしないのだが.
声のオクターブを上げたり味覚を調整したりといった,ひとの願いが生み出す異能と,その転売業者を描くシリーズ二巻.前半は見識とゆおのいびつな依存関係.後半は,いじめられっ子の前に現れて異能を与えるという「異能配りのおじいさん」の謎が中心.いじめのメカニズムとその克服についてや,元いじめっ子のアザミ先輩やもうひとりのバイト店員,一色の素直な成長が描かれる.ざっくりと前後半に分かれている.前後半でけっこう印象が違うのだけど,ひねくれた設定や語りと,まっすぐな熱さだったり成長だったりを,それぞれ別のキャラクターに託して,噛みあわせてひとつの物語の形をつくっているというか.こういった,斜に構えるだけじゃない話は好きなのよな.一巻(感想)と比べても読みやすく面白くなっていると思う.楽しく読みました.