円山まどか 『八月の底』 (ディスカヴァー・トゥエンティワン)

八月の底 (Right novel)

八月の底 (Right novel)

「いいんです。これでいいんです。これだからいいんです。こうしないとわたしは」
比奈はもういちどくりかえした。
「こうしないとわたしは、しあわせになれないではありませんですか」

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桃色の反吐を吐いたその日,妹が失踪した.兄の静男は,クラスメイトの朝丘と協力して妹の行方を探す.そこには,過去のふたりに起こった出来事と,街に起こりつつある不穏な出来事が関係していた.
少し不思議で不穏な雰囲気を持つ物語.子供の頃に妹と見たカブトムシの死体と小人の記憶や,宗教団体「侏儒の会」は海外の幻想小説のような雰囲気があると思う.しかし,話の幹がどこにあるのか掴めないまま,気取ったテキストと格闘するうちに最後まで行ってしまった.話自体も仏教がベースになっているのかな.よくわからなかった,というのが正直なところだけど,後味の良くない不安な読み心地はデビュー以来一貫しているよね,という.