カミツキレイニー 『七日の喰い神2』 (ガガガ文庫)

――この轢き神の首を落として、安楽浄土の地が踏めると思うな。堕ちてこい、童。この憎しみ、この因果、決して死んでも終わらんぞ。堕ちてこい、堕ちてこい、童っ!
潰れた目を剥きだし、だらりと舌をはみ出させ、首は暴れた。
見る見るうちに轢き神の頬が痩け、肉が腐れて垂れていく。

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かつての戦友で祈祷士の大坂雪生から仕事の依頼を受けた古川七日は,ある地方の夏祭りを訪れていた.七日に久しぶりに再会した雪生は,七日の姉,六花にそっくりな喰い神・ラティメリアの姿に驚く.
七日たちの過去,七日とラティメリアの出会い,ラティメリアが七日の姉にそっくりな理由と,「禍ツ六花」と呼ばれ恐れられた戦時の英雄の末路.現在と過去をクロスさせて,ここまでの出来事を浮かび上がらせてゆく.ひとに仇なすマガツカミと,沖縄戦(この世界では,数年前まで太平洋戦争によく似た戦争があったらしい.詳細は今のところ語られない)を絡み合わせたストーリーは悪趣味で救いがない.マガツカミも軍人も,誰も彼も信じられない.救いのない話を書き出すとイキイキしだすのは気のせいじゃないよな.
沖縄出身の作者だけあって,沖縄の描写は詳細かつ自然だと思う.そういうところも含めて,ただ悪趣味なだけでなく,物語のバックグラウンドと一体になっているし,物語に重みと説得力を与えている.ともあれ,デビューして以来の作者の最高傑作ではないかな.広くすすめはしないけどすごく好きな作品になりました.