ツカサ 『熾界龍皇と極東の七柱特区 IV』 (ガガガ文庫)

熾界龍皇と極東の七柱特区 4 (ガガガ文庫)

熾界龍皇と極東の七柱特区 4 (ガガガ文庫)

「真に人のことを想いなさい。人間にとっての幸福とは、食べ、眠り、まぐわうこと。それ以外は、本来の欲求を満たせぬがゆえの代替物でしかありません。けれど人間たちは知恵を得たがゆえに、代替物の精錬に傾倒し、真の幸福を見失おうとしています」
眉を寄せ、悲しそうに彼は語る。
「ですから私は彼らに、知恵の実を食した原罪を祓う機会を与えます。ミカエル――人間に価値を求め、期待するのはやめなさい。それは彼らを押し潰してしまう。過剰な重荷です」

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《陽皇》(アマテラス)の統治する第七特区で,奇妙な病気が流行りはじめた.その病気に罹った者は,文字や数字を突然認識できなくなるという.原因の調査を行う湊たちは,天元(エール)の統治する元北海道,第一特区から贈られた果実の存在を知る.
巨大な力を持つ幻類(エナ)が人類に与える“理想郷”と,そこにおける人類の幸福について.描こうとしている大きな物語と,第七特区を中心に置く個別のエピソードがうまく連携していない? ように見えるのは自分だけかな.大きな力に任せて生きる道を良しとしない,というのはよく分かるのだけど,主人公の視点からいまいち説得力を感じない.各特区と人類のテロリストを巻ごとに個別に攻略していて,広がりを感じないのが一因なのかなあ.ハーレム展開が取ってつけたようなのは,まあこの作者の長所でもあり短所でもあり.個人的には嫌いになれないところ.