枯野瑛 『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』 (スニーカー文庫)

優れた軍は、その効果をよく知っている。だから、野郎だらけの戦場にほどよく女性を交ぜる。
補給部隊や後方救護班でもいいが、前線により近いところであればなお効果的だろう。卓越した剣技で戦場を駆ける少女騎士だとか、聖剣(カリヨン)に選ばれし無双なる少女勇者(ブレイブ)だとか、華奢な体に強大な秘術を刻み込まれた悲劇の少女呪蹟師(ソーマタージスト)だとか。
そんなものがどこかの戦場に「いる」という噂のひとつだけで、単純な野郎どもは簡単に奮い立つ。
どこの創作物語だよと言いたくなるくらいの現実みのない設定も、そもそも現実らしさなんてものが消えて久しい戦場にあっては、ちょうどいい味つけにしかなりはしない。

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侵略者によって人類は滅ぼされ,それから数百年の時が流れた.徴無しの青年,ヴィレムは,軍の秘密兵器の管理者の仕事を請け負う.軍の管理施設と聞いて中央部から離れた68番浮遊島を訪れたヴィレムだったが,そこにいたのは古い知り合いと,たくさんの少女たちだった.
人類が滅んだ後の世界で,いずれ死ぬことを定められた少女たちと,その青年教官の物語.どこかで見たような露悪的な設定と,非常に丁寧で魅力的なファンタジー世界が見事に並び立っている.五百年眠り続けた影響か,やけに枯れた主人公ヴィレムも良い感じ.説明し過ぎないんだけどわかりやすく,お約束を踏襲しつつも非常に熱い.すごくバランスの取れた物語になっていると思う.ぐいぐい読ませられた.実はタイトルに合わぬ硬派(?)で完成したファンタジーだと思うんだ.だいぶ読むのが遅れたけど続きも買ってきます.