竹宮ゆゆこ 『砕け散るところを見せてあげる』 (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

善意だとか正義だとか、それらは通りのいい「言葉のマスク」だ。そういうかっこいいマスクで、俺は俺自身の身の内から聞こえてくる(傲慢じゃねえ?)というかすかな警告を覆い隠しているのかもしれない。関わることを拒絶されても今度は傷つかないように、あるいは傷ついた顔を誰にも見られないうように、自分を守っているのかもしれない。古今ヒーローにマスクが必要なのは、もしかしてそれが理由なのか。自分の都合で他人の人生に手を出すという一線を、恥ずかしげもなく超えるために、脆い生身の素顔を隠すのか。

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大学受験を間近に控えた高校三年の冬.濱田清澄は,全校集会でひとりの女子生徒がいじめられているのを目撃する.いじめに割って入った清澄だったが,いじめられていた後輩,蔵本玻璃から激しい拒絶を受ける.
UFOが撃ち落とされて二人が死んだ,という独白から始まり,いじめ,虐待,殺人,そして.活き活きとした登場人物たちを,落として上げてまた落として,という.竹宮ゆゆこの真骨頂であろう.不穏な雰囲気に,読み進めるのに勇気がいるというか,お腹が痛くなる.ラストは,最初に読んだときは何が起こっているのかさっぱりわからなかった.最後の20ページくらいを何度か読み返して,あるトリックが使われているのがやっと理解できた.今ではようやくぼんやりわかった,ような気がしている.帯が謳う「小説の新たな煌めきを示す、記念碑敵傑作」が本当かどうかは,実際に読んで確かめてみるといい.それだけの価値は間違いなくあると思うので.