GODO 『最新の魔法遣いとアイを識るもの』 (ファミ通文庫)

「魔法って、おっしゃっていますけれど……それは、あの、いわゆる魔法なのですか?」
「いわゆる魔法ってのが何かわからないなぁ。ただ、勘違いしないでほしいんだけど、魔法遣いって言ってはいても、別にわたしはファンタジー(おとぎの国)の住人でもなんでもないよ。人よりもかなり不自由で、人よりもかなり変で、人よりも未来を行っているだけ」

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第六世代人工知能を搭載したサポートデバイスエウレカ】を手に,あらゆる物質への干渉を可能とする少女,雫石ミコトは,「最新の魔法遣い」と呼ばれていた.所属する独立行政法人先進技術総合研究所,略して先総研で【エウレカ】のファームウェアをアップデートしていたミコト.その折,先総研が何者かのテロを受ける.
ミライショウセツ大賞テーマ部門『魔法使い』優秀賞受賞作品.次世代人工知能をめぐる近未来の物語.魔法少女ものと見せかけて,実は各国の陰謀が交錯するサスペンスだったり,アクションものだったりといった色のほうが強い.次世代の人工知能に,魔法にしか見えない最新の技術という,クラークの第三法則を下敷きに置きつつ,舞台はお台場,つくば,三浦半島沖の研究施設.理研産総研がそのままの名前で登場するし,そのほか小ネタもたくさん.なんか,いかにもギークが書いたSFという風情が見え隠れするのが好ましい.ハードSFと言えるかは微妙なんだけど,技術で遊んでいるみたいな感じがあって,ストロス『アッチェレランド』の最初のほうを思い出した.第六世代と第七世代の間にある秘密とか,「技術立国日本」の描写とか,気になる点がぽつぽつないでもないけど,良い意味で気楽に楽しめました.