- 作者: 相沢沙呼
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/06/21
- メディア: 文庫
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帰宅し、布団に籠もる。
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僕は喘いだ。ひたすらに喘いだ。わけがわからなかった。
小説を書き続ける意義が、僕には理解できない。こんなふうに罵られて、こんなふうに嫌悪されて、それでも続けなければならない理由を、見付けられない。
僕は暗い部屋の中、毛布を被り、ひたすらに呻く。泣いたところで、心を軋ませる痛みが治まるわけでわないのに、それがわかっていながら、みっともなく涙を流し続けた。
小説なんて糞の役にも立たない。ただただ、それは僕を苛むだけ。
僕は小説が嫌いだ。
中学生で覆面小説家としてデビューした千谷一也.その作品はネットで酷評され,売上も振るっていなかった.小説を書く意義を失い,書けなくなりつつあった一也の前に,同い年の人気作家,小余綾詩凪が現れる.詩凪と一也は,担当編集の提案により小説の合作をすることになる.
彼女には“小説の神様”が見えるのだという.小説家が「小説を書くこと」や,物語にできることについて書いた青春小説.凄まじい.吐いたであろう血反吐の跡が見える小説をはじめて読んだ.良いことも悪いこともひっくるめて,作者の経験したことの,おそらくすべてを叩きつけたのだろうな.端々から立ち上がる熱量が凄いことになっており,浮き沈みの激しい心理描写に胃が重くなり,心が引きずられる.売れたい,から始まる一也の小説に対する考え方も,かなりの面で作者の本音が入っているんだろうな,と想像させられた.
陽向と日陰に象徴される,キラキラした景色が美しく,小余綾はエロ可愛くて良い.ちゃんと太もももあるし.「物語を愛するすべての人たちへ捧げる」というのは嘘ではない.本当に,凄まじい傑作だと思います.