- 作者: 浅倉秋成,中村ゆうひ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/07/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
――特定保健用食品――
Amazon CAPTCHA
「あ、あの……ごめんなさい」あたしはたまらず博士に声をかける。「な、なんでこの拳銃『トクホ』なんですか?」
「ん……あぁ、それか」博士は小さく頷く。「本物の拳銃と見分けがつかなくなると困るからね、遊び心でロゴマークを入れておいたんだ」
「……いや、にしたって、他にいくらでもやりようがありそうな」
「摂取し続けると体にいい影響がありそうな感じで、なかなか魅力的だろう?」
北関東と南東北の間あたりにある日の下町.この町で起こった,いくつかのちょっとした恋と嘘と諍いが,やがて町全体を巻き込む大きな渦になってゆく.時系列の重なりあう五つの連作短編と,その五つの集大成となる短編からなるドタバタ群像劇(?).どこかトンチンカンなひとびとの恋のすれ違いや,トンチンカンなアイテムが,軽妙なテキストでユーモアたっぷりに語られる.個々の短編は,舞台がひとつの町ということもあって『それでも町は廻っている』の小説版みたいな感じ.全員集合のフィナーレとなる表題作「失恋覚悟のラウンドアバウト」は想像してたよりだいぶおとなしかった.まあ「ラウンドアバウト」だから衝突したり事故ったら困るわけだけど.お気楽なコメディとして悪くないので,それこそ「それ町」が好きなひとならさっくり読んでみるのがいいかもしれない