蒼山サグ 『ステージ・オブ・ザ・グラウンド』 (電撃文庫)

違う。お前らの目は節穴なのか。
あれは、本物の魔球なのに。
まともなら、今の朋彦にはまだとても攻略できないような、すごい球なのに。
まともなら。キャッチャーが、まともに野球と向き合ってさえいれば。

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「野球はもういい」.そういって幼なじみと揃って野球をやめた幸斗は,高校生になって不毛で横滑りな青春を送っていた.そんなある日,かつて幸斗たちに夢を見せた「常滑スライダーズ」のエースが帰ってくる.
愛知県常滑市を舞台にした直球の青春小説.勝手に夢を見て,勝手に裏切られて,勝手に腐っていたメンバーたちが,ひとりの天才の帰還をきっかけに変わりはじめる.ストーリーの目新しさはあまりないのだけど,青春小説として描写はキレまくっている.友人たちの鬱屈した関係だったり,何かを諦めたようなそれぞれの姿が変わっていく様子はほんとうにうまいと思う.魔球のロマンだったり,バッテリーの関係といった野球関係の描き方はそこそこだけど,丁寧に描こうとしている.バッテリーの関係にキュンキュンするがいい.……それだけに,あからさまにキレとテンポが落ちて,続編へのつなぎが見え始める後半の展開とあとがきは残念.正直,続きを読む気が失せた.前半は本当に良かったんだけどなあ.