枯野瑛 『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #02』 (スニーカー文庫)

「正義は、武力を振るっていい理由にならねぇからだ」
すっぱりと切って捨てる。
「その逆。武力を振るう理由を正当化するために掲げられるのが正義だ。
相手を殴りたい理由は必ず別にある。必ずだ。
奪いたいから。貶めたいから。侮りたいから。気に食わないから。消したいから。ストレス解消したいから。あるいはそいつらの組み合わせ」
軽く手を振って、古い詩でも吟じるように、語る。
「しかしそれを認めたくはない。どうせなら、後ろめたい気持ちなどなく、気持ちよく全力で相手をブン殴りたい。
そういう時に、自分や味方を騙すため、正義という名の旗を担ぎ出す。
どいつもこいつも無自覚のままそれをやるから、本気で正義を信じる者同士が互いを全力でブン殴って戦争が起きる。そういうもんなんだよ、昔から」

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クトリ,アイセア,ネフレンの三人が15番浮遊島での〈六番目の獣〉(ティメレ)との決戦に向かって半月.待つ身となったヴィレムは,次代の妖精兵であるティアットを,11番浮遊島へと連れて行く.そこでヴィレムは,決戦敗北の報を受ける.
人類が滅亡して数百年後,唯一生き残った「人間」の教官と,戦うために創造された妖精少女たちの物語.やっぱりタイトルから中身が想像しにくい,硬派なファンタジー.一度滅んだ世界の脆弱さがすごくよく出ているのが良い.空中に浮かび,ちょっと間違えたらあっという間に崩壊しそうな世界.そんな世界において,唯一の人間であるヴィレムの視点がとても良い.自らも不安と疑念に揺れ動かされながらも,元勇者としての,また唯一の大人としての厳しく優しい視点.というか,徹底して大人視点の物語なんだな.世界の状況を知っている大人が語ることで,世界が絶望的であることがより鮮明になっているし,大人の目から見た子供たちは,考えてることがわかりやすかったり,逆にまったく読めなかったりする.とても良いと思います.じっくり続きを追っていきたい.