- 作者: 新八角,吟
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2016/09/10
- メディア: 文庫
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……――広大な平野に一人の人間が立っていた。
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夕焼け空でもないのに大地は真っ赤に染まっていて、やがてそのなだらかな丘は人の骸だと気付く。
死体の丘に立つその人は青い刀を握り、独り空を見上げている。
その人がどんな表情をしているのか知りたくて、俺は一歩近づいてみる。
今まさに起こらんとする,三つの国を巻き込む戦争を止めるヒントとなるのは,数百年前の戦争をひとりで平定したという血翼王の伝説と,血翼王が自身で記したと言われる「血翼王亡命譚」.シリーズ最終巻.一巻(感想)で感じた傑作の予感が形に現れつつあっただけに,三巻で終わってしまうのは非常にもったいない.実際,三巻は少し詰め込み気味だったり,展開が急だったりはする.
しかし本当,この上なく魅力的な世界を創り上げたことは誇っていいと思う.鳥と猫と人間(など)がいて,あらゆるものは言血に満ちていてという,独特のファンタジーをこれでもかと詰め込んだ世界がとても楽しい.荒削りなところもまだあるのだけど,毎回わくわくさせられた.今回はしっかりとした戦争を描いているのも良い.戦争に至る理屈を描くことに注力しつつ,時間的空間的スケールも忘れず描こうとしている.テーマ自体は珍しいものではないけれど,独特の世界観もあって安直な結論には落ち着かない.国のため,民のためというそれぞれの明確な立ち位置と,数百年前の,あるいは個人的な「怨讐」を重ね合わせた物語の熱は本物だと思う.次回作も楽しみにしております.