枯野瑛 『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #03』 (スニーカー文庫)

「ごめん。わたし、もう、絶対に、幸せになんてなれないんだ」
デスペラティオに、薄く、魔力(ヴェネノム)を通す。まるでもとから身体の一部であったかのように、すんなりと力は刀身に馴染んだ。
「だって、気づいちゃったから。わたし、もう、とっくに幸せだったんだって」
にま、と、歯を見せて笑って――
そして少女は、足場のない空へと、その身を躍らせた。

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おかえりの声を聞きたかった.ただいまをきちんと言いたかった.それらを叶えたいま,約束は尽き,終わりがすぐそこまで近づいていた.
前世の侵食によって消えようとしている少女と,この世界を取り巻くいくつかの謎について.終わりの近い世界の儚さを描いているのは変わらないし,それを救おうとする少女の儚さを描いているのもまた変わらないのだけど,今回は妙に現実から浮いていく感覚があった.夢と現実と前世の間を行き来する,地に足がつかない不思議な感覚が絶妙に描き出されている,と思う.悲しいんだけど,ある意味ひどくロマンティックでもあるんだよな.表裏一体をなしている.続きもゆっくり追いかけてきます.