秀章 『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』 (スニーカー文庫)

けど、ごめんね。
ごくはやっぱりこの旅団(サークル)が大事だから――七氏族軍資を見つけたいから、君とはもう関われないよ。
だから、さようなら。
ありがとう。

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20年前の戦争後,七つの氏族が用意した共同軍資が忽然と消えたという.七氏族軍資と呼ばれるようになった財宝を巡る,冒険者たちの時代が幕を開けた.“軍資に一番近い旅団(サークル)”と呼ばれる男4人女1人からなる旅団は,ある時ダンジョンでクリスタルに封じ込められた記憶喪失の美女を救出する.その日が,最高の旅団(サークル)だった彼らの崩壊の始まりだった.
求められれば誰とでも寝るサークルクラッシャー女子が旅団(サークル)を修羅場に変える.作者約2年ぶりの新作.こんなタイトルなんで現代ものかと思ったらファンタジーだったでござる.なんか間違ったのではないかと何度も扉を確認してしまったわ.
トーリーはタイトルどおりだし,本当に誰とでも寝るヒロインの話なのに,全体的に邪気がないし嫌みの少ないコメディになっているのがすごい.白魔道士は能力を保つために童貞を守らないといけないとか,一見してベタな設定も,実はうまく生かされているんだよね.童貞を守らなければいけないゆえに近づきたいでも近づいちゃいけないという,そんな立ち位置が第三者視点にも一応の説得力を出している.どうでもいい話のようで,細かいところまで気を配っているのではないかね.作者の書いてきた青春ものとは色んな意味で一線を画しているけど,これもまた青春.良いものだと思いました.