ツカサ 『天球駆けるスプートニク 未到の空往く運送屋、ネジの外れた銀髪衛精』 (ノベルゼロ)

西暦二〇三〇年七月七日、旧日本時間で十六時三十二分十六秒――その瞬間に人類は空を奪われた。
全天を覆い、地上へ降り注いだ無数の光。それらは性格に周回軌道中の人工衛星と飛行機を貫き、撃墜した。
その一時被害による死者は約九十万人。落下物や火災などによる二次的な犠牲者は、世界中で五百万人以上。

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西暦2030年.地球上空に現れた正体不明の72機の飛行物体,“衛精”によって,人類は199フィートより高い空を失った.それから17年後の西暦2047年.北太平洋の最速横断記録を持つ運び屋,イバ・タクロウの元には,今日も様々な依頼が転がり込んでくる.
地球は200フィートより高い空を奪われた.思考実験の一種のような状態になった近未来の地球を舞台に,運び屋の男と犬耳銀髪少女を描く.200フィート(約60メートル)という超低空を飛ぶことを強いられる(それより上空に行くと衛精に撃墜される)超低高度飛行艇(ULF)のスピード感があまりないのが惜しいかな.あと,舞台やテーマの大きさに対して,描かれる視点はあくまで主人公寄りのミクロなもの.それもひとつの方法だし悪いわけではないのだけど,もしシリーズ化するのであれば,今回の主人公ふたりにこだわらず,この魅力的な世界の地球をもっとマクロな視点で描いてくれるといいな.例えば生態系の変化とか,政治経済とか触れてないに等しいし.あとがきにあるように主人公をあえて「大人」にしたのであればいくらでも書けそうじゃないですか.