枯野瑛 『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #05』 (スニーカー文庫)

ありふれた英雄物語の決まり事は、もう、役に立たなかった。
奇蹟を起こす祈りもなく、逆転の一手を打つ者もおらず、すべてを解決する古代の叡智が目覚めることも、なかった。
だから、それまでの経過にふさわしい順当な結果として、人類は滅びた。

Amazon CAPTCHA

――不自然なものには、どうしたって無理が出る。無理なものを維持しようとしたら、当然、余計に失われていくものも出てくる。
――奇妙に思えるかもしれんがね。平和というやつには、戦争状態よりもはるかに大きなコストがかかるのだ。見えにくいところでな。それが、遥かな古代から、誰もが平和を希求しながらろくに維持できなかった、何よりの理由だよ。

Amazon CAPTCHA

記憶を封印されたヴィレムは,幼い星神(ヴィジトルス)エルクと仮初めの平和を送っていた.ある日,浮遊大陸に〈穿ち貫く二番目の獣〉(アウローラ)が降り注ぐ.
こうして世界は星神(ヴィジトルス)に造られて,滅んだのでした.世界を救った勇者(ブレイブ)と少女妖精たちの物語.世界はどうして生まれ滅びたのか.この世界の答え合わせのような,シリーズ第一部完結.共通の敵を前にした戦いに終わりが見え,浮遊大陸群(レグル・エレ)の間に隠れていた諍いの種が露わになる.「平和こそが最も恐ろしい災厄である」という言葉が意味を持って重くのしかかってくる.すべては一筋縄ではいかないし,ハッピーエンドへの道筋は見えない.まあ一区切りとはいえ,印象としては「第一部,完!」で終わっているのよな.続きは読まざるを得ない.毎度言ってることですが,タイトルに騙されてはいけない,とても丁寧なファンタジーだと思います.
余談ですが,平和を維持するのがいかにコストがかかるものか,という考え方はアイアンマウンテン報告*1が面白く読めるので,参考図書として読むといいです.

*1:http://cruel.org/books/books.html 山形浩生のサイトで全文PDFがダウンロードできます