坊木椎哉 『きみといたい、朽ち果てるまで 〜絶望の街イタギリにて』 (角川書店)

きみといたい、朽ち果てるまで ~絶望の街イタギリにて

きみといたい、朽ち果てるまで ~絶望の街イタギリにて

「イタギリはね、世間から爪弾きにされた人たちの拠り所なの。ハル坊みたいな生まれながらの住民じゃなければ、たいていが訳あり。脛に疵持つ身もいれば、社会のレールから脱線したエリートの成れの果てもいる。人様には言えない、墓まで持っていくつもりの秘密や過去を抱えてる人なんて大勢いるわ」

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様々な人間が集まる底辺の街,イタギリ.ゴミ屋として,日々ゴミの収集と死体回収をしていた少年,晴史には,気になる物売りの少女がいた.
希望のない街で出会ってしまった少年と少女の行く末.第23回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作.全体的に長所も欠点も同時刊行の『この世で最後のデートを君と』(感想)とほぼ同じ.キャラクターの行動がどうも薄い.ただ,黄昏に染まる架空の都市には雰囲気があって,こちらのほうが読み応えがある.舞台はまるで現代日本に作られた九龍城.なんだけど,猥雑さとか整合性とかは足りないので,どうもわくわく感には欠ける(選評でもほぼ同じことを言われているけど).後半は(これも帯にあるように)確かにとても良かったのだけど,これを尻上がりと言うのもなんだかなあ.短くまとめて,短篇で書いてくれればだいぶ印象が違ったのではないかという気はした.