小山恭平 『「英雄」解体』 (講談社BOX)

「英雄」解体 (講談社BOX)

「英雄」解体 (講談社BOX)

「気をつけなさい。『英雄』はどんなところでも消えないのだから」
だから、英雄というのよ。

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英雄は時代を表す顔だが、その顔には、目も耳も口も鼻も、何もない。今そこにある時代の様相、それこそが英雄の顔なのだ。仮面でしかない。

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「退役英雄日常回帰補助機関」の役割は,異世界で救済を終えて戻ってきた元「英雄」を,日常に戻す助けをすること.主人公,魔女,傾国の姫.職員の山田烏鷺は,元英雄である三人の少女のサポートを担当することになる.
第25回BOX-AiR新人賞受賞作.世界は意志を持っている.意志が英雄を生む.じゃあ不要になった「英雄」はどうしたらいいんだろう.英雄論を語った物語ではあるのだけど,それと同じくらいキャラクター論や物語論の色が濃い.主人公とは,贈与者とは,マクガフィンとは,云々.軽いノリで始まる異世界転生ものかと思っていたら,英雄論の講釈がそれなりに混じり,しかし全体で見ると思いのほかしっかりと挫折と成長を描いた物語になっているという.良かったです.英雄論が好きなら読んでみてもいいかもしれない.