牧野圭祐 『月とライカと吸血姫』 (ガガガ文庫)

彼女が成し遂げた偉業は、この先、誰にも知られることはないかもしれない。
皆から褒めたたえられることもなく、歴史に名を残すこともないのだろう。
それどころか、過酷な運命にあらがえず、存在すらも闇に葬られるのかもしれない。
だが、真実は違う。
彼女こそが、史上初の宇宙飛行士(コスモノート)だ。

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世界を巻き込んだ大戦が集結して10年.ふたつの超大国,東のツィルニトラ共和国連邦と,西のアーナック連合王国は,戦場を宇宙に移し,宇宙開発という名の熾烈な競争を続けていた.共和国はロケットで人間を軌道上に送り込む「ミェチタ計画」を発令する.その裏では,人間を宇宙に送り込む前段階の実験として,吸血鬼を宇宙へと飛ばす「ノスフェラトゥ計画」が進行していた.
宇宙に犬を送り出すことに成功した東の超大国が,次に選んだ実験体は吸血鬼だった.冷たい戦争の時代に繰り広げられたもうひとつの戦争と,その裏側にあった真相を描いた「宙と青春のコスモノーツグラフィティ」.スペースバンパイアは関係ありません.
超大国の徹底した秘密主義と権力争いに縛られ,実験体と監視役という間柄にありながらも,宇宙への憧れと夢がふたりを強く結びつける.ストーリーそのものはとても素直だと思うので,旧ソ連の宇宙開発史の流れとか,もろもろの固有名詞の元ネタをどれだけ知っているかで,どこまで面白がれるかが決まりそう.自分はそのへん詳しい方ではないので,詳しいひとに読んでもらってネタの解説とかしてほしいな.