深沢仁 『英国幻視の少年たち4 ウィール・オブ・フォーチュン』 (ポプラ文庫ピュアフル)

「私がそのようなつまらない感情に囚われて人生の選択をするように思っていらっしゃるのなら、それは侮辱です。私は私の意志で、あなたの傍を自分の居場所にすることに決めました。あなたがなにを言おうと、変えるつもりはない」

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第二の目を持つ中学生鞠子.彼女はある老女との出会いからイギリスへの憧れをつのらせ,20歳で渡英することになる.リュートを奏でる青年グレンとの出会いから,鞠子は大きな運命の転変を迎える.
登場人物たちそれぞれの過去を掘り下げる,シリーズ第四巻.どこか性格の悪いキャラクターが多いシリーズなのだけど,その性格の悪さの原因が明らかになっていくのがやけに切ない.幽霊が見えてしまう少女,呪われた瞳を持つエルフ,いじめられっ子の孤児.居場所のない人物というところは共通していると言えるのかな(エルフもいるが).
基本的にとても静かな語りなのに,時々とても情熱的な表現が混ざるのが本当に良い.読むたびに同じことを言ってる気がするけど,独特の雰囲気を持っている.エルフの世界やエルフと人間社会のギャップの描き方もすごく面白いんだけど,これといった元ネタがあるようにも見えない.いろいろな伝承や創作物のミックスなのかな.先が楽しみな,良いシリーズになったと思います.