岡本タクヤ 『異世界修学旅行5』 (ガガガ文庫)

異世界修学旅行 5 (ガガガ文庫)

異世界修学旅行 5 (ガガガ文庫)

「でも、この世界にも相撲があったとはな」
俺が言うと、柊は微笑を浮かべた。
「かつて、世界が広がった明治という時代に、かの夏目漱石がロンドンから正岡子規に宛てた手紙の中で、レスリングを西洋の相撲と呼んでいる。無論、ルールこそ違え、互いの肉体を使って相手を制するという意味においては共通する。ロシアに、モンゴルに、中国に、アフリカに――。どの文化圏においても、相撲はある。世界のどこに行っても、相撲ができればなんとかなるのだ」

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異世界で修学旅行を続ける一行.次の目的地は,オーク,コボルト,フェアリーの三種族との交易により栄えた城塞都市.ところが,一行が到着する頃,三つの種族は人間との1000年続いた交易を取りやめるとの宣言を出す.
野球だ相撲だ運動会だ,の巻.導入の村上春樹に始まり,あとがきも村上春樹で終わる.ハルキズムにあふれる一冊になっている.まあ半分冗談だけど.相撲さえできれば,世界どこでも,どころか異世界でも通用するという理論が非常に良い.この世界とあの世界は確実につながっているのだ,みたいな感慨が生まれる,かもしれない.
のんびりした異世界修学旅行に,何やら厄介な世界変革の影が差し掛かるも,変にシリアスにならずにあくまで楽しくのんびりした感じが続くのが楽しい.それでいてそれぞれの成長だったり変化だったりをしっかり並行して描いているのも一貫している.タイトルで敬遠されそうだけど,どんどん良いシリーズになっていると思います.