阿部藍樹 『白翼のポラリス』 (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)

「商人のこころ構えのない者は、鉄火場に立てば商人ではなくなってしまうということだよ。私はいつだって、自分は商人でありたいと思っているがね。君はどうだ?」

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はるかな昔に大地のほぼすべてが海に没した世界.人々は,自走能力のない巨大な船上に都市国家を作って暮らしていた.少年シエル・ミグラテルは,父の遺品である水上機ポラリスに乗り,荷運びの“スワロー”を営んでいた.
海と空だけの世界で飛行機乗りの少年は少女と出会い,ふたつの国に起こる戦争を止めようとする.第6回講談社ラノベ文庫新人賞佳作受賞作.物語自体はヤングアダルト小説のようなファンタジーで,オーソドックスなボーイ・ミーツ・ガール.皮肉ではなく,純粋な物語だと思う.雄大さを十分に感じることのできる世界はとても良いと思う.しかし,細かい設定というか原理というか,突き詰めていない部分が多いのは気になる.特に「バイオコンパス」の曖昧さと,やたらあっさりと説明される「永久機関エンジン」には首を傾げた.SF好きでなければ気にならないところなのかなあ.