野々上大三郎 『棘道の英獣譚』 (ダッシュエックス文庫)

棘道の英獣譚 (ダッシュエックス文庫)

棘道の英獣譚 (ダッシュエックス文庫)

「ごめん、大丈夫、ありがとう」
ライザーは彼女の気遣いが嬉しくて、同時に少し寂しかった。
生身を捨て続けた身体では、少女の体温を感じ取ることができなかったのだ。

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世界を飲み込まんと拡大を続ける自然異産《棘の森》.超常への対策を使命とする組織,混沌狩りにとともに森に入った青年ライザー・ゲフォンは,仲間をかばい獣に襲われ意識を失う.目覚めた彼の右腕は樹木と化していた.
妹のため,森で出会った少女のため,世界を脅かす怪物を倒さんとする青年の孤独な鍛錬の日々を描く.第3回集英社ライトノベル新人賞,特別賞受賞作.樹木の右腕と龍の仮面を身に着け,徐々に人間ではなくなっていく主人公と,暴威を振るう世界樹《イルマンシル》のある種のライバル関係だったり,失って,手に入れて,戦ってと,一巻完結の少年漫画のような,キレのいい作品だと思う.逆に言うと,余計なものを削ぎ落としている感じもあるかな.努力と友情と勝利をすべて盛り込み,「頂きを目指すには努力しかない」という思想を,ちょっとやり過ぎなくらいにノリノリで書いているのが良いと思う.