渡辺僚一 『はるまで、くるる。 春の日のような、甘くて果ての見えない、悪夢と終末のハーレム』 (桜雲社)

はるまで、くるる。~春の日のような、甘くて果ての見えない、悪夢と終末のハーレム

はるまで、くるる。~春の日のような、甘くて果ての見えない、悪夢と終末のハーレム

「この事実は長い間、科学者を苦しめてきました。その中でわかったのが脳神経の四次元配列です。三次元的観測では観測不能な情報伝達回路があるとわかってきたのです。そもそも私達の認識する三次元世界は四次元世界のホログラムみたいなもので……。この話は長くなりますし、関係ないので省略しますが、とにかく脳の配列を元に作られたのが、四次元的配列の記憶媒体です。これは時代の徒花でした。大容量の記憶媒体があるのにそこまでしなくても、と。ですけど、ここではそれが役に立ちます。影響を受けるのは三次元の物質で、四次元的配列の記憶媒体に干渉できません」

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目を覚ますと記憶喪失で,田舎の温泉旅館のような場所にいた.名前すらわからない俺は,そこで同じように記憶のない4人の少女と出会う.「3ヶ月後、必ず助けに来る」というメモだけを頼りに,他に誰もいない場所での共同生活がはじまることになる.
2012年に発売されたPCゲームの小説化.澁澤龍彦の引用から始まり,SF(しかも時間とか脳とか色んな方面にまたがるSF)だったりミステリだったり猟奇殺人だったり,本当にいろいろなものが好き勝手に詰め込まれている.原作の評判だけはなんとなく知っていたので,ハーレムエロゲの皮を被ったなにかなんだろうな,とは思ってたけど,こういう時間的・空間的スケールの話になるとは思わなかったので素で驚いた.個人的には「左巻キ式ラストリゾート」以来の衝撃だった.最近の作品で連想するのは「最後にして最初のアイドル」かな.詳細を突っ込んでいくとネタバレになりそうで感想が難しいんだけど,ここにあげたタイトルとかゼロ年代SFとか好きなら読んでみるといい.