縹けいか 『異世界監獄√楽園化計画 ―絶対無罪で指名手配犯の俺と〈属性:人食い〉のハンニバルガール―』 (ダッシュエックス文庫)

「人として生きる以上、調和は大切だ。人間は個体として見れば非常にか弱く、弱肉強食の世界ではとうてい生き抜けない存在――のはずだった。しかし生き抜き、進化をしたのだ。それは人類に“協調性”という、他の動物にはない能力が備わっていたからだ。人間は協力し合わなければならない。社会を形成しなければならない」
「なら、人類を進化させた“協調性”や“社会”が、これから人類を滅ぼすと予言してあげるよ」
「……なるほど、よくわかった。君は天才かもしれないが、とても愚かだ」

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記憶喪失の少年,トウは,気がつくとどこかの闘技場のような場所にいた.ここは様々な世界の凶悪犯罪者を収監した異世界監獄サクラメリス.トウは「史上最悪の指名手配犯」として,ここに囚われることになったのだという.
ここにいるのは人食い少女,殺人鬼,剣豪,聖女,大泥棒.異世界の交差点である監獄に隠されたとある事実について.大罪人の名前を持った異能力だったり,監獄を中心に形成された異世界の街だったり,オーソドックスでありつつ,いろいろと詰め込もうとしているのがなんとなくわかる.根幹に関わる大掛かりなトリックはミステリ的で面白いのだけど,意外とあっさりとすませた感があってちょっともったいない.嫌いではないけど,尖った長いタイトルのわりには印象が薄い作品ではありました.