紫野一歩 『あのねこのまちあのねこのまち 壱』 (講談社ラノベ文庫)

あのねこのまちあのねこのまち 壱 (講談社ラノベ文庫)

あのねこのまちあのねこのまち 壱 (講談社ラノベ文庫)

今日この日、あの猫の町に電車は停まる。

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地図にあるのにたどり着けず,駅があるのに電車が停まらない町,夕霧町.妖怪たちも住むこの町では,一匹の猫又がよろず相談屋を営んでいた.たまたまこの町にたどり着いてしまった高校生,幸一は,ある相談を持ちかけたことで,猫又のフミに振り回されることになる.

少し不思議な町の優しく悲しい怪異譚.第6回講談社ラノベチャレンジカップ大賞受賞作.なんというか雰囲気が抜群に良く,物語にすいっと入れる.妖怪の商店街といい,みんなを幸せにしたいと言うわりに私生活がだらしない猫又フミといい,良い具合に力の抜けたテキストと良く噛み合って,ふわふわしつつしっかりとした存在感を出していると思う.ただ,後半の展開は好かない.というか前半二話と後半二話で物語の方向性自体がけっこう変わっていた気がするんだよね.タイトルに「壱」とあるから,続編でフォローするのかもしれないけど,救いがまったくない話と読んでしまった.個人の好みの問題かもしれないけど,前半が良かっただけに,後味が悪すぎて…….