七飯宏隆 『放課後限定勇者さま。』 (電撃文庫)

放課後限定勇者さま。 (電撃文庫)

放課後限定勇者さま。 (電撃文庫)

「あのなスヴァン。不条理ってのはさ、『こうあるべき』という自分ルールを世界や他人に押しつけるところから始まるんであってさ。最初っからものごとが自分の思いどおりにならないって理解してれば、感じるはずのないものなんだよ」

スヴァンは少し考えてから言った。

「……それはつまり、世の中になにも期待するなということですかな?」

「まあ、そうだな」

高校生の格里終夜は,ある日突然異世界から召喚されてしまう.露出の多い美少女と言葉をしゃべるたくさんの猫から,『勇者』としてともに『魔王』を倒してほしいと頼まれる終夜だったが,よくよく聞いてみるとどうやら人違いで召喚されたらしく.

異世界転移ファンタジー.このころ(2009年5月発売)の電撃文庫ではメジャーな概念ではなかったのか,「()世界」といちいちルビがふられているのが新鮮.ストーリーは今となっては普通かな.『勇者』,『魔王』,『伝説の剣』といった言葉がかぎかっこで囲われているのは何らかの意味があるのだろうとか,すべての並行世界を滅ぼす『魔王』とか,深読みしたら楽しそうなところもあるけど,良くも悪くもさらっと読める.悪くはないと思います.