松村涼哉 『1パーセントの教室』 (電撃文庫)

1パーセントの教室 (電撃文庫)

1パーセントの教室 (電撃文庫)

日比野は、両目から大量の涙を流していた。そして、その瞳をまっすぐオレに向けながら「雨ケ崎さん」と先ほど通りのクールな声で、泣いたまま告げた。


「恋をしました、キミに――」

真水高校いちの美少女,日比野明日香は,そばにいる者に漏れなく不幸が降りかかるという噂から,「死神」と呼ばれていた.祭りの日,平凡な高校生,雨ケ崎誠也は,彼女から突然の愛の告白を受ける.それが破滅へのカウントダウンの始まりだった.

彼女に関わった者は,99パーセントの確率で破滅する.大枠は青春ミステリなんだけど,そこに「教室」と「祭り」が複雑に絡み合うことで,なんとも不思議で胡乱な読み心地になっていた.と言っても,あとがきでも言われているように,デビュー二作()に共通していた病的な重苦しさや痛々しさは薄め.比較するとだいぶ読みやすい.

ヒロインである日比野の存在感が強いおかげで,ストーリー全体に救いがあるように見えるのかな.「死神」と呼ばれる,基本的にはクールな無表情キャラなのに,時々お茶目な面を見せたり,情熱的な面があったりと,実は多くの表情を持っている.実に可愛らしい.おかげで終盤まで「教室」に闇があることに気づかなかった.リーダビリティの高さもあって,例えるなら酒を飲んでいるつもりで毒を飲まされていた,みたいな読後感よ.これが電撃文庫ではなく,ミステリフロンティアから出ていたら違和感がなかったかもしれない.先が気になる.続きが出るのをお待ちしております.