パク・ミンギュ/斎藤真理子訳 『ピンポン』 (白水社)

ピンポン (エクス・リブリス)

ピンポン (エクス・リブリス)

もちろんだよ。四〇年前に私は実際に鳩と公式試合したことがある。三人の立会人が見守る中、二一対一九の薄氷を踏むような接戦だったよ。どっちが勝ったんですか? 鳩が勝ったのさ。

中学生の釘は,同級生のモアイとともに,いじめっ子のチスから日々暴力を受けていた.もともと話すこともなかったふたりだったが,ある日,原っぱの中心に置かれていた卓球台を見つけて卓球をするようになる.

宇宙は卓球であり,永遠のジュースで調和を保っている.韓国の作家による少し奇妙な青春小説,でいいのかな? ふたりのいじめられっ子が野原に置かれた卓球台と出会い,卓球の師匠を得て練習に励んだ末に,人間界代表として卓球界人と戦うことになる.大きく場面が転換するポイントが三つほどあり,油断すると普通に置いていかれる.面白いポイントも多いのだけど,文体に目が滑りがちなこともあって,個人的には100パーセント乗り切ることが最後までできなかった.この文体と,主人公の心情にいかに共感できるかによって,かなり没入度合いが変わりそうな作品だという気はした.野球小説だというデビュー作『三美スーパースターズ 最後のファンクラブ』も買ったので,そのうち読んでみようと思います.