- 作者: 周藤蓮,ニリツ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/01/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
「ええ。愛です。愛ですとも。いつも、何をしていても、誰かのことが頭の中に浮かぶのなら、それは愛に他なりません」
ラザルスたちは当初の目的地だったバースを訪れた.温泉と賭博を中心に,観光都市として栄えるバースでは,ともに賭博師である儀典長と副儀典長の熾烈な権力争いが水面下で進行していた.温泉から戻ったラザルスは,自分の部屋に放置されていた血まみれの少女を保護するしたことから,権力争いに巻き込まれることになる.
18世紀末のイギリスを舞台にした,賭博師と奴隷少女の物語.イギリスに関するうんちくは相も変わらずで楽しい.住民の性質や階級をポイントに,帝都ロンドンと観光地バースの違いを簡潔に比較したうえで,権力争いの構造を非常にわかりやすく描いている.イギリスオタクの愛が自然に物語に溶け込んで,物語の下地をしっかりしたものにしているという,理想的な組み合わせだと思う.
ゲーム(牌九とハイアンドロー)の緊張感も素晴らしい.帯に謳われている「愛と狂気」を纏ったゲームの緊張感は本物だと思う.「愛と狂気」をロジカルに,それでいて形を失わないよう描いており,そういった話の組み立ては,どことなくミステリっぽい.ような気がする.本当に良い作品だと思います.