比嘉智康 『覚えてないけど、キミが好き』 (一迅社文庫)

覚えてないけど、キミが好き (一迅社文庫)

覚えてないけど、キミが好き (一迅社文庫)

忘れてしまった自分のエピソードを聞くたび、自分がわからなくなる。

過去の自分の話を聞くのは、自分を知れる喜び以上に、不安と恐怖があった。

だから俺が次の言葉をおそるおそるといった口調で言ってしまうのは仕方ないんだ。

ひとつ下の妹ひなたとふたり暮らしをしている高校2年生の小衣吉足.彼は3年前に事故で両親を失ったショックから,それ以前の記憶を一部失くしていた.ある日,吉足のクラスに転校生の美少女が現れる.皆の前で吉足の元カノであると告白した転校生ゆららだが,吉足にはその記憶がまったく存在しない.

記憶にないポンコツ彼女と,ある秘密を抱えた妹と,記憶を失くした俺の,少し不思議な三角関係ラブコメ.ストーリーそのものに不穏な秘密があるようなのだけど,それ以上にラブコメ分が強く前に出ている.木を隠すなら森ではないけど,ラブコメ成分が濃厚なテキストで描かれる,クラス内のドタバタや女の子のポンコツ具合が楽しい.見せたいものがはっきりしているというのかな.個人的にしっくり来ないところもあったけど,続きが気になるので2巻も読みたいと思います.