手代木正太郎 『魔法医師の診療記録7』 (ガガガ文庫)

魔法医師の診療記録 7 (ガガガ文庫)

魔法医師の診療記録 7 (ガガガ文庫)

「――それは、地獄。あの御方が真に目覚めるためには、今一つ地獄が足りません……。その地獄をあの御方に与えられるのはあなただけ……。現世において、あの御方の傍にずっとあったあなただけ……。あなたの存在があの御方を未だ人の身に繋いでいる……」

妖病(ダムヌム・ミナトゥム)の末期症状に至り,ヴィクターは肉体が悪魔化したまま戻れなくなっていた.クリミアとヴィクターは,一縷の望みを賭けて最後のガマエ研究者ジゼラ・モルガーニのいる聖庁を目指す旅に出る.

黙示録の悪魔は目覚め,世界は生まれ変わる.医療とは愛であり,本当に人を癒やし,世界を救うのは愛である,という.山田風太郎風医療伝奇小説の最終巻.どう見ても忍法な医術や聖法を駆使した異能バトルが最後の最後まで続くし,ガマエの真実が明かされ,悪魔と聖女の戦いからパンデミックへの流れが美しい.尻尾の先まであんこたっぷり,けれん味もじゅうぶんなまま突っ走っていった感.それにしても一発ネタだと思っていた聖女ラ・ピュセルが物語の核心になるとは思わなかったわ.トンデモない物語のなかで,ブローとギヨテーヌの師弟関係が熱く,一服の清涼剤だった.余すところのない大団円.お疲れ様でした.