西条陽 『世界の果てのランダム・ウォーカー』 (電撃文庫)

世界の果てのランダム・ウォーカー (電撃文庫)

世界の果てのランダム・ウォーカー (電撃文庫)

「アリス、それを好奇心というんだよ」

ヨキはいう。

「大切にするといい」

ここにあるのは広大な世界と,その上空に存在する天空国家セントラル.セントラルから派遣された調査員のヨキとシュカは,それぞれの職務と己の好奇心と目的の赴くまま,世界を旅して調査をする.

まるで生物をそのまま固めたかのように精密な石像の謎,砂漠に七日間で誕生した都市の秘密,肉体が銀色の鉱物と化す病気の意味…….第24回電撃小説大賞金賞受賞作は,広大な世界に散らばる少し不思議を探る短篇連作.SFのようであり,ファンタジーのようでもある.最終的にはモノリスを探す旅の話になるのでSFなのかなと思うんだけど,その割には「デジタル化した意識」をこれ以上ないくらいめたくそに否定しているのよな.興味深いところではあるんだけど,リアリティレベルが短篇ごとに不安定で,作者の考えてることの立脚点が見えないのが個人的にとても気になった.と言っても良いところも多いし,好きなひとはおそらくすごく好きになる作品だと思う.