牧野圭佑 『月とライカと吸血姫3』 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫3 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫3 (ガガガ文庫)

「あなたが歩いたあとに、歴史は作られるの」

「歴史……?」

「そう。これからの世の中は、知性を武器に闘うのよ。野蛮な暴力は、もう過去の手段。だから、あなたが先頭に立って、この国の歴史を変えてみて。……難しいかな?」

有人宇宙飛行を成功させたツィルニトラ共和国連邦に対して,アーナック連合王国は完全に遅れを取ることになった.劣勢のアーナックは,月面に人類を送るプロジェクトの決行を宣言し,民族融和と科学技術をアピールする広報計画を開始する.メンバーに抜擢された新人技術者のバートは,新血種族(ダンピール)のカイエが室長を勤める「Dルーム」に配属されることになる.

最初の宇宙飛行士を描いた東から,舞台は西へ移る.東西冷戦下での宇宙開発競争の隠された物語,第三巻.高い実力を持ちながら,その出自によって正当に評価されない新血種族のカイエ.ぽっと出の新人なのに,宇宙飛行士の弟であるという理由だけで選ばれた人間のバート.ふたりは吸血鬼と人間の融和のシンボルとなり宇宙進出を目指す.ざっくりと言うと吸血鬼版『Hidden Figures』(放題『ドリーム』)かな.話としては良いのだけど,けっこうなレベルで『Hidden Figures』に似ているのが気になった.あとがきに実際に参考にしたとは言っているし,単に黒人を吸血鬼に置き換えただけではないのはわかる.ただ,差別の描写やジャズ・フューネラルの作中での使い方など,もともとの題材が題材だけにかなり引っかかってしまった.ちょっと神経質な読み方かもしれないんだけど,すみません.