鴨志田一 『青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない』 (電撃文庫)

青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない (電撃文庫)

青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない (電撃文庫)

無理やり嫌いなものを好きになんてなれない。好きになろうとすればそこに摩擦とか圧力とか、なんらかの無理が生じる。それが自分を苦しめるだけなら、前向きに諦めてみるのもひとつの手だ。それで救われるものがあることを、咲太は二年前に学んだ。かえでの件を通して知った。戦うだけがすべてじゃない。それでいいのだ。

科学部の同級生,双葉理央がどうやらふたりに増えたらしい.またしても咲太の前に現れた思春期症候群の症状である.咲太は増えたふたりのうち,ひとりの理央を家に匿い,もうひとりの理央と会話を重ねる.

ドッペルゲンガーのような量子テレポーテーションのような現象で,相反する欲求を持ったふたりに別れてしまった少女の恋と痛み.アニメ化も決まった「青春ブタ野郎」の三巻.ひとことで「増えた」,「分離した」とは言うけれど,お互いに存在を認識しながら,接触をまったくしようとしないまま話が進むのがなんというか不思議な感覚.単に問題を解決するのではなく,寄り添うことを大切にしている,ように見えた.力の抜けた言葉とまっすぐな行動がとても心地よい.派手なことは起こらないけれど,とても良い青春小説だと思います.