さがら総 『変態王子と笑わない猫。12』 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。12 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。12 (MF文庫J)

だれかを助けるために生きてきた。オスカー・ワイルドの『幸福な王子』のように、思い出を分け与えて、女の子の涙をとめることに価値があると信じた世界で。

でも――そうじゃないのだと、かつての未来で、いつかの過去で、教えてもらったのだ。ぼくのいっとう好きだった、お母さんがわりの人に。

何もかも変わってしまった世界で,大切な人たちのことをもう一度思い出すために,時間を進めよう.手元にあるのは横寺くんの言動を綴った,全11巻にも渡る横寺くんノート.

約2年ぶりの新刊にしてシリーズ完結編.完結させるために書いたような雰囲気があるけど,ひとつのけじめをつけてくれたことには感謝したい.どこにも悪いやつなんていなかったし,実際のところ何もする必要はなかった.みんなが幸せになるのに,誰かが犠牲になる必要はなかったのだ,という.これは信頼できない語り手の話だ,と自分がずっと主張してきたことがあながち間違いでもないことがわかって,個人的にはとてもすっきりした.お疲れ様でした.